卒業生インタビューVol.49
今回の和光人インタビューは、つい先日までNHKの大河ドラマ『光る君へ』に須麻流役として出演され話題となったダンサー・俳優のDAIKIさんにインタビューをおこないました。
現在は「SOCIAL WORKEERZ」という会社も立ち上げてダンサーとして活動する傍ら、MUSIC BIRD全国コミュニティFM~DAIKIのInclusive Monday!~『教科書では学べないこと』 (生放送)のラジオパーソナリティとしての顔もお持ちのようです。
インタビュアーは和光大学の副学長でもある制野俊弘先生にお願いしました。
(聞き手…和光大学 人間科学科教授 制野俊弘先生)
大河ドラマ「光る君へ」に出演して
聞き手:4月に会って以来かな。大河ドラマは毎回先生の奥さんが熱心に観ているのだけれど「光る君へ」に出演したことによる反響はあったの?
DAIKI:ありましたね。大河は50年以上の歴史がある中で、やっぱり障がいのある俳優が出るっていうのは初めてだったんですよ。今まではそれがタブー視されていて、やっぱり暗黙の難しさがあった中で、今回の監督さんは、それを打破する考えの方だったんです。それでオファーも直々にいただいたので、出演させていただいたことによって、歴史が変わった瞬間っていうのが大きく報じられて、Yahoo!ニュースにも取り上げていただいて色々なところから取材を受けました。「どんな気持ちでやっているんですか?」とも聞かれましたし、「須麻流って、誰?」っていうネット検索も多数あったようです。
聞き手:なるほど。大河では全く異例なことだったんだね。
DAIKI:そうですね。特性がある人たちを主体的な感じの役で出るのは、僕が初めてです。出来ないことは、自ら出来ないと言う
聞き手:例えば、変な気の遣われ方をしたとか、何か変な配慮されたとか、そういうことはないの?
DAIKI:これは、どの舞台でもお仕事いただいた時も大河に限らず撮影現場ではどこでもそうなんですけど、やっぱりこの体で登場した以上、皆さんにはどうしても気を遣われちゃうので…。
聞き手:そうだよね。
DAIKI:そう。先に僕のほうから「ここ」と、「ここ」と、「ここの時は、助けてください」って言っています。例えば、撮影現場で段差がすごいセットがあったりとかした時に、真っ暗だとやっぱり足のサイズ的に転んじゃいやすかったりするので、「その時だけ肩を貸してください」とか。そういう自分に何ができないから、こういうサポートをちょっとお願いしたいっていうのを自分から用意するようにしています。それを一応プロのお仕事として大事にしないと、結局気を遣われて起用するのは疲れちゃうみたいな感じで思わられたらお終いなので。
聞き手:なるほど、そういうのは大事だよね。
DAIKI:後に続かなくなっちゃうので、そういうことはちゃんと言うようにしていて、こちらから持って行けるバリアフリーグッズは自分で持って行ったり、自分なりの休憩の過ごし方とか工夫しながらですけれど。
聞き手:そのほうが、かえってスタッフ的には楽なのかな?
DAIKI:そうですね。それを自分でできる人なんだと思ってもらったほうが、それこそ演技の話にちゃんと集中して高められるので。そこで気を遣われちゃうと本当にそれで精一杯になっちゃう。物理的にも難しいことは、もうこの際先に言っておくことにしています。
聞き手:たぶん周りのスタッフもどこまで要求していいかとか、どれだけ普通の台本通りに進行して良いのかみたいなのもたぶん分からないだろうね。
DAIKI:難しいことですね。だから、リハーサルで確認しながらになるのですが、今回のことで言えば例えばをしていないんですよ。平安時代は、胡座が普通なのに、僕の場合、足の形的に胡座ができないんので、僕の場合は、「膝立ちで待っている姿勢で良い」ですか?って自分から提案して、「良いですよ」って言われていました。本当はあの時代の男性って、みんな胡座だったりなんですよ。女性は正座みたいな感じですね。実際に、僕はすぐ足が痺れちゃったりとか痛かったりとかするので、「膝立ちでいいですか?」っていうのを第1話の撮影の前にお話させていただいて、「じゃあそれでいきましょう」っていうこともありました。
聞き手:まぁそうだよね。
DAIKI:その瞬間、DAIKIって、そういうことの言える人というか、自分からディスカッションしていくっていうのか、できないと思わせるんじゃなくて、こういう向き合い方していいでしょうか?っていうアンサーを返すことでやっぱり認められるようになったり、それで実際に出演シーンも増えたりしたんです。
取得した単位は、200単位越え。
聞き手:和光大学の在学中の思い出深いことって、何かある?
DAIKI:僕、あれですよ。卒業に必要な単位って、いくつでしたっけ?149?
聞き手:124だよ。
DAIKI:124か。僕は卒業するまでに授業が面白すぎて200いくつも取っていましたよ。
聞き手:200取っていたって。200! あの時はシノケンもだったよね? 200単位って一口にいっても、毎日3コマ、4コマくらい?
DAIKI:時間がもったいないと思って(笑)もう全然2、3年生と変わらないくらい取っていまたね。もう面白すぎて。
聞き手:学校が好きなんだね。
DAIKI:学校は大好きだし、自分の奨学金で学んでいるからっていうリアルな問題もあったんですけれど、どうせ大学に来ているんならギリギリまで色んな学びがほしいじゃないですか。絶対その後に活きるからっていう考えが、もう1年生の時からありました。だから、あまり授業がない日を作るっていう考え方がなかったですね。それがまた楽しかったんですけどね。
伝え方と、お互いがどう歩み寄れるか次第で物事は大きく変わる。(言葉えらびの大切さ)
聞き手:当時は、まさか俳優って選択肢はなかったよね?
DAIKI:はい。14歳からダンスも好きでしたけど、和光大学に通っている時は、俳優の「は」の字も、正直言って興味もありませんでした。もう本当に体育の先生かダンスかっていう二択って感じだったんです。自分でもビックリしていますよ。
聞き手:先生もビックリだけど。日本の演劇シーンみたいなのが、ここのところにきてやっぱりちょっと変わってきているかなと感じるのだけれど。
DAIKI:そうですね。それは思います。
聞き手:色んな障がいを持っている人とか発達系の色んな困難を抱えている人も、そういうメディアに出始めているね。むしろそれを障がいって見るよりも、やっぱり特性って見るほうがやっぱり強くなってきているよね。
DAIKI:そうですね。役者の武器。そういうので先駆者になれたらなと思って、俳優業もやりたいって言っていました。お話をいただいた時に受領したというか、やりますと、お返事させていただきました。
聞き手:不安はなかったの?
DAIKI:一切ないです。指導案と授業準備が大事だって、和光大学で散々学んだんですよね。反応が薄くても、生徒の理解が追い付いていなくてもどうにかできるっていうのは、僕はその準備をしながら仕事をしているつもりです。
聞き手:そうだよね。先生もそうだけど、あまり気を遣わないっていうかさ。何かできないことあったら言ってね!くらいなもので。例えば、大学の時にバレーボールとかやったでしょう? だけど、だからと言って、ネットを極端に下げるとか、ルールを変えるだとか、そういうのはなかったものね。その人その人、の個々に合わせたルールをつくる。この辺は和光高校ともつながるところがあるかもな。
DAIKI:そうですね。その考え方は、本当に先生のおかげなんですよ。授業作りのおかげで全ての場面においてそれが活きているという感じがします。例えば、最初に出会ってすぐ相談したのが、やっぱり器械体操とハードル走。
聞き手:あったね。
DAIKI:試験にもあるし、生徒に教えなきゃいけない必須科目であるっていうところで、実技のお手本が見せられない。お医者さん的にダメであるっていうところをどうしたらいいですか?っていうのをたぶん1番最初に話した時に、生徒にお手本になってもらえるためにどう指導していく言葉選びをするか、どんな内容にするかっていうのが大事!っていうことだったので。
聞き手:そうだね。
DAIKI:そこから向き合い方を変えれば何かヒントがあるというか。体育もそうだし、ダンスもそうですけど。それが、今でもたぶん現場の俳優業や芸能活動などで僕が活かされている原点はそこですね。それのおかげで、たぶん今、仕事ができているのだろうと思います。
聞き手:そうだね。厳密に言えば、ハードルができませんとか水泳できませんとか、球技できませんっていうのは、普通だったら免許が取れない。与えられないっていうのが、たぶん社会常識だと思うわけだけど、教師っていうのは指導する立場だから、その指導するやり方次第で、別に教師が全部の見本を見せてやるとか万能でなきゃならないっていうことではなくて、それは誰かが補えばいい話だし、補ってもらう・補ってくれるみたいな関係を作るほうがかえって難しいからね。
DAIKI:本当にそう思います。
聞き手:それができれば、例えば、俳優業だろうがダンスだろうが、必ずそういうレスポンスが返ってくるような関係作りをすれば何でもいける。
DAIKI:関係の築き方がすごく大事なんじゃないかなって、社会に出てすごく感じています。
聞き手:でも、DAIKIの場合は、もう最初からできていたよね。
DAIKI:そうですね。人見知りもないし、自分の難しいと思ったことを相談するってことが大事だと思っていたので。それは、もう在学していた時から変わらないというか。だけど、先生の授業への考え方を聞いていて思ったのは、例えば、学校でダンスの授業ができないっていう先生たちも多い中で、体育ではダンスの授業がありますよね。実はそこだけ非常勤で持たせてもらったりはしているんですけれど、その時に生徒とどう関われば良いかとか、道徳や総合学習で、福祉の一環も含めて特別支援級の子どもたちと普通級の子どもたちと交わる時間を作りたいというので、そういう授業を持たせてもらったりとかすることが多いんです。
やっぱり、伝え方やお互いがどう歩み寄れるか次第だなっていうのはすごくあります。大学の教職で1回挫けそうな時に、器械体操とかどうすれば良いのかな?っていう話を制野先生に相談したことがあります。『先生であろうと何者になろうと、言葉でどう伝えるかは結構大事!』だなと思っています。自分が生きていくためにも、仕事としてもそうですけど。
聞き手:そうだね。
DAIKI:そこは今も磨き続けなきゃと思えています。
聞き手:いつかDAIKIに言ったかどうか分からないけど、先生が関わっていることで言えば、教職で学んだことは社会で必ず活きるよっていうような話はしたことがあるよね。
子ども・生徒について考えること。
聞き手:それは単なる言葉上の問題ではなくて、実際に子どもを想定して色んなことをやったでしょう?
子どもを想定して色んなことができるっていうことは、当然大人を想定してできる。何でなのか?っていうと子どものほうが難しいからね。
DAIKI:それは間違いないですね。
聞き手:うん。やっぱり子どもの反応も分からないし、子どもって大人とは別の生き物だから。大人は、ある程度10のうち8、9割は想定できるけど、子どもってなかなか想定はできないから。
DAIKI:難しいですね。サポートしても6、7割しか消化できないから。
聞き手:だから、そこを想定して色々物事を読み切れれば、まぁまぁ大人の世界でも通用するんじゃないの?っていうのはあった。
DAIKI:そうですね。
聞き手:ただ、大人になると、やっぱり対等な関係の分だけ生きづらさが出てくるからね。実際、舞台とか撮影現場とかで、やりづらさはなかったの? この人、なんかよくわかってないなとか、なかった?
DAIKI:そうですね。伝えてカバーしてもらうからには、それ以上のものにしたいと思ったんですよね。結果カバーしたほうが良かったなっていう作品にしなきゃいけなかったり、そういうのをやっぱりできないからカバーしてほしいじゃなくて、そういうサポートの体制を整えてくれたからこそ、作品や撮影がもっとより良いものになったっていう風にできないと自分はプロじゃないなと思っています。
それでも芸術家たるもの、こだわりが強い人がやっぱりいらっしゃるので。「体痛いかもしれないけど、ここは頑張って!」とか言われちゃう時もあるんですよ。だから、そういう時は、そうか!って思いながらもう限界突破しながらですけど。結果、向き合った魂を評価してもらって次に繋がることもあるんですね。
でも、それは人それぞれですね。そんな人もいるけど、こういう生き方とか経験をしてきたからこそ、そういう人の気持ちにも共感できる大人でいたいなと思います。
聞き手:たぶんDAIKIの場合は、色んな経験をしてきているから、そんな風に言えるんだろうね。先生なんかよりはよっぽど感受性も強いし、色んな経験の中で、それこそ辛いこととかさ。
DAIKI:そうですね。
聞き手:悲しいこととか、やりきれないこととか、いっぱい経験してきたわけでしょう。数え切れないほどしているわけでしょう。だから、そういう意味では幅も深さもあると思う。
DAIKI:そうですね。人よりもそういう選択肢が増えているとか、考え方にすごい幅があるので。だから、人の痛みも理解できるようになった。何でできないのか?とか。例えば、ダンスの子どもたちでも「今日はやりたくない」みたいな…。ちょっと反抗期的な子どもたちのその保護者が悩んでいるとか。どの人の気持ちにも歳を重ねるごとに寄り添えるようになったのも、すごく教育と向き合ったこととか色んな経験が今に活きているなっていうのは思っています。
大学時代にもさまざまな場面で。
聞き手:実際に長野に行ったことがあったよね。長野県の須坂っていうところの中学校に行って、実際に小山吉明先生っていう人の授業を見せてもらったよね。
DAIKI:はい。覚えています。
聞き手:宮城に行って、体育祭の手伝いと野球部の指導をしてもらったこともあったよね?
DAIKI:はい。ちょっと時間があるっていって、見てほしいっていって。
聞き手:長野のもそうだし、宮城のほうもそうだけど。先生方も、それから子供たちも最初、え?この人、誰?みたいな。
DAIKI:ビックリしていましたよね。
聞き手:何で来たの?みたいな。しかも相棒は、180cm以上あるケンタロウね。あなたを連れて行くと、何ですか?この落差はみたいな。
DAIKI:デコボココンビ(笑)たしかに、たしかに(笑)
聞き手:だけど、1番良かったのは、別に話してみれば普通じゃんって。運動能力も高かったから、やってみれば、何だ、俺らより上手いじゃん!みたいなことで、ぐっと距離が縮まったよね。
DAIKI:掴みとしては良い武器なんですよ。面白い。だから、今はそう思えているんですよね。だから、27くらいから思えるようになったんですけど。踊り始めてもそうですけど、運動し始めても、やっぱり子どもたちが、えっ?ってなるので。でも、目線が同じっていうのが、やっぱり生徒にも寄り添えるいい武器だと思っているし、子どもたちも話しかけやすいというかね。
聞き手:そうだったね。あの時、どこの子どもを見ても、最初は、え?って、ちょっとギョッとするんだけど。その後はもうすぐに寄っていくっていうかね。何て言うんだろうね? やっぱり興味を引く。
DAIKI:この体のこの見た目だからこそ、子どもたちに歩み寄れるものがあるのかなというか、寄り添える理由があるのかなと思います。子どもにとって興味ってとても大事だと思っていて、大人になって仕事をしていて、やっぱり面白くないとか、え?っていう、見たことないような考え方や見え方がないと、子どもたちって面白くないじゃないですか? そういう意味では、すごく良いのかもしれません。
聞き手:そうすると、あれだよね。やっぱり大橋さつき先生(現代人間学部人間科学科)からも色んなものを吸収してきた…。
DAIKI:本当そうですね。だから、表現者としてはさつき先生から沢山得て、教育者としては制野先生から得てきたって感じなんですよ。だから、本当に贅沢な最後の4年生の1年間だったんですよね。
聞き手:良いミックス状態だった?
DAIKI:はい。両方大事にやっていたので。それが両方、今に繋がっているというか。そこで集まってきている人たちなんじゃないかなと思います。今、一緒に仕事をしている人たちは。その考え方がいいって言ってくれる人たちなので。
聞き手:体育もそうなんだけど、例えば、DAIKIの体を見た時に表現できるの?とか、この人、本当にスポーツできるの?とかっていう、いわゆるマイナスからスタートするじゃん。
DAIKI:そうですね。僕の人生マイナスからだったので。
聞き手:大丈夫! 先生はもっとマイナス。同じマイナス同士。マイナスとマイナスでプラスになる。
DAIKI:プラス(笑)
聞き手:運動できるの?みたいなところからスタートして、あれ? 普通にできるじゃん! だけじゃなくて、更にその上に積むって、やっぱり表現の世界って可能性がすごいよね。
表現の持つ無限の可能性!
DAIKI:いかようにも可能性があるというか。だから、その考え方と向き合い方は、すごい教育にも活きてほしいなっていうのは思っていて。ダンスも色んな表情1つ違うだけでとか、片腕がないだけでまた違う表現が生まれるし、僕のこの体だから余計にできることもあるし、伝え方もあるしっていうのが、すごいヒントになるなというか、人の考え方の物差しとして。だから、そうやって他の教育に関わる人たちの考え方も豊かになったらいいなっていうか。それは、そういう学校の先生たちともよくお話ししますね。一緒に授業やっていて。
聞き手:逆に言うと、私はすごい違和感を持っていたんだけど、学校とか企業もそうだけど、どんどんどんどん同質になっているんじゃないかな。
DAIKI:そうですね。
聞き手:同質のね。なるべくこういう最低限の要求、最高の要求くらいの間のところで人を欲しがるよね。
DAIKI:分かります。
聞き手:学校って、ここの枠ははみ出ちゃいけませんよっていう枠の中で子どもを育てようとするじゃない? そうするとDAIKIに限らず、やっぱりはみ出すとか、その枠に引っ掛かってこない子たちは、やっぱりどんどん行き場所がなくなっていってしまうんだよ。
DAIKI:すごく分かります。
聞き手:狭くなるでしょ。だって、それって小中高時代に体験してきたんじゃないの?
DAIKI:体験してきて、僕は「うるせぇ馬鹿野郎!」って言ってはみ出てきていたので、自分から選択して自ら決めました。それに反対する人が多かったですけどね。もちろん。体育の免許取ること自体も高校生の先生たちに反対されていたし、中学校高校では難しいんじゃない?って言われていたし。でも、そこも考えようだったり、そこにいる人たちとどう向き合ったかで考えられるわけです。どれだけ心を豊かにできるか? どれだけ楽しんでいるか? を大切にしたい。
DAIKI:体を動かすことの楽しさを通じて、どれだけ心を豊かにできるか?っていうのがテーマとして僕は授業しに行っているのに、成績下がるからっていうか。
聞き手:やっぱりそういう子は多いからな。
DAIKI:どうしても成績に重きがいってしまうっていうか。僕が伝えたいのはそこじゃないんだよねっていうのは正直に言っちゃうんですけど。それをどれだけ楽しんで向き合っているかっていうことだと思うからね!っていう話はよくしています。
聞き手:だから、世の中全般がそうなんだけど、学校も学力テストみたいな評価に向かっていくわけだよね。世の中の会社もどれだけ成果が出るか?とか、どれだけこの人は稼げる人なの?みたいな出口のところで縛られるわけでしょう。
DAIKI:そうですね。
聞き手:そこからはみ出すっていうことは、もう入口の段階でそれがもし分かっていれば狭められるわけじゃない。だから、DAIKIが教員になりたいのに、なかなか採用してくれるところがないっていうのは、やっぱり一定の枠内に、その学校教育を収めようとしているからなのかもしれない。
いや、そうじゃない見方もあるんじゃないの?っていうところを先生は追求したいなとは思ってはいるんだけどね。DAIKIが教員になったら、これは世の中変わるなとは先生は思っているよ。
障がいから生まれる0点って言われて衝撃を受ける。
聞き手:まだしばらくは日本の教育は変わらないなとは思っている。
DAIKI:僕も和光大学を卒業した後、卒業してしばらくやっぱり教師を諦めきれなくて、色んな教育委員会に電話をしましたけど。体の事情を話したらやっぱり1番言われて強烈だったのが、やっぱりその日、実技を骨折して採用試験を受けられない受験生と、僕がこの病気をもって器械体操だけ受けられないっていう扱いは一緒ですって言われて。
聞き手:骨折している者と比べられたわけ?
DAIKI:つまり0点と障がいから生まれる0点が一緒っていうか、実際に0点になるんですよ。22歳で卒業して色んなところに問い合わせてそこに衝撃を受けました。
私学のほうがやっぱり学内会議とかで何人かは考えてくださる方々いたんですよ。やっぱり先生のおっしゃる僕が教師になってもたらせるものが何か?っていうのを考えてくださる方もいらっしゃれば、現実的にはそれでも難しかったですけど。0点っていう言葉を直接言われてすごい衝撃だったんですよ。
聞き手:とにかく実技の試験を受けられないっていうことは、採点もできないから0点だよっていうことだろうね。
DAIKI:だから、筆記がどんなに一次で受かったとしても、あなたの場合、二次でこうなりますよっていうのを実技試験の時にハッキリと言われて。
聞き手:あの実技試験っていうのを先生は反対。 反対っていうよりも、実技試験はあっても良いんだけども、それなら、採用するんだったら指導法ができるっていう試験をやれば良いじゃない?って思う。
本当に大事だと感じていること (言葉を使って表現して、相手を楽しませること)
DAIKI:プツンときたっていうのは、感情的になったっていうか。その本人ができているか、できていないか、そんなに重要なんですか?っていう話は正直に言うとぶつけました。僕は大学でこの体でこういう学びをしてきました。たしかに受けられません。あなたの言う通り、実技はできませんと。受けられないかもしれないけど、大事なのって言葉をどう使ってとか、どう生徒たちを楽しませることができて、体育に参加させることができるか。見学とかじゃなくて。そうやって変えていくべきなんじゃないんですか?って考え方を言っています。
聞き手:いくら体育教師だって50、60歳になったらもうできないことが増えてくる。誰しもそうなるわけであって。その時にやっぱり言葉の力とか、「頼むね」って言って、良いよって言われるような関係性を作れる教師であれば、もう何でもできるわけだよね。
DAIKI:それはすごく思いました。
聞き手:そこの考え方を変えるべきだっていう風に世の中に訴えるには、あなたが最適だと思うよ。先生がいくら口で言うより。色んな道がある。
とあるワークショップにて。100回褒められれば…。
聞き手:それは、教育の世界で言うと、働きかけるものも働きかけられるっていう風に言った人がいるよね。城丸章夫さんっていう人が。それは、もう大原則で。子どももそうだけど、大人の側が働きかけるものが働きかけられる。逆に子どもから色んなものを働きかけられている。だから、教えているつもりだけど実は教えられていたり。
DAIKI:働き掛けられているところはありますよね。それは、すごく思います。
聞き手:働きかけているつもりなのに、逆に子どもから働きかけられているっていう、こういう世界だから。だから、たぶん楽しいんだよ。
DAIKI:楽しいですね。やっばりそんな体の使い方する?みたいなのが面白いんですよ。教えたことに対して。僕の場合は全然違うことをしてもOKな授業しか作らないので、学年全体のダンスの授業やっていて、もう絶対にダメっていうのはナシにしているんですよ。
聞き手:ダメ出しはしないの?
DAIKI:ダメ出ししないです。120人のワークショップをやった時に、補助でやっぱりそれぞれの担任の先生いるじゃないですか。
聞き手:うん。そうだね。
DAIKI:だから、生徒たちには言わないけど、先生たちには「約束です! 絶対ダメって言わないでください」って言います。「この120分終わるまでに、生徒たちのことを100回褒めてください」って言うんです。後で話を聞きに行くので、ダンス以外の授業で知らなかった一面が見えたら、「あいつダンスになった瞬間、めっちゃリーダーシップ発揮するじゃん!」とか、そういう気づきがあったら先生たちは最後に発表してください。っていう流れを大事にしているんですけど。
聞き手:先生たちって、意外とそういうの苦手だよな。
DAIKI:いや、意外とどころか皆、苦手です。
聞き手:だって、ダンスだって、こう踊ったほうが良いとか、もっとこういう風に…って考えるわけでしょう?
DAIKI:そう。だから、もうDAIKIさんがこうやっているから、皆こうじゃないといけないみたいな考えって強いんです。もうビックリするくらい先生たちのほうが、意外とカチコチですね。僕は、授業する時に(先生達にも)生徒と同じことやってもらうんですよ。「はい、じゃあ次、先生たちチームの発表の番です!」とか言って。
聞き手:硬いんだ?
DAIKI:そう。こうやって。なんかカチコチ。考え方がカチコチだから体もカチコチになって
いるみたいな。でも、それで良いんですって言っているんです。
聞き手:だから、そのためにダンスとかがあるんだよね。
DAIKI:それのおかげで先生と生徒が距離縮まったりとか、その日を境に色んな話ができるよ
うになったっていうお声掛けをいただいたりとかしているので。僕の目的は、むしろそこなん
です。その授業で別にプロのダンサーを作り上げたいわけじゃないし。
聞き手:だから、もっと言うと、子どもを育てているフリをしながら大人を育てているんだよ
な。
DAIKI:そう。両方なんですっていう。
聞き手:そうだよな。それは面白いね。
自由に学べる、和光大学!
DAIKI:DAIKIくんはどこ出身なんですか?って言われた時に、和光大学って町田のほうにある
んですけどって言ったら、色んな人を受け入れる体制がすごくあるっていうので、皆知ってく
れていることが多かったです。
聞き手:先生のことを知っている人は、和光って言うと、なるほど! ってやっぱり言うわけ。
だけど、学生がそうやって言われるっていうのは、やっぱり嬉しいね。
DAIKI:最近多いですね。年取れば取るほど、和光って言うと、「あー、なるほど!」ってい
う人が結構多いですね。
聞き手:東京あたりだと年配の人は、ある程度知っているかもしれないよね。やっぱりそういうイメージもあるんだ。和光って。
これからの夢を語る。
聞き手:30歳を超えて、もうそろそろ自分の生き方が見えてきた感じ? それとも、まだちょっと彷徨っている感じ?
DAIKI:どういう絵が描きたいかが見えてきましたね。殴り書きが終わりました。今まで8年間ガムシャラでしたけど。特にこの8年間っていうか、自分の人生をもってですけどね。難しいことがありつつ。もっと多くの人に伝わるにはどうしたら良いんだろう?とか、その学校を変えるにはどうしたら良いんだろう?とか、めっちゃ探りながらやってきましたけれど。やっぱり自分だからこそ伝えられることとか、自分のこの病気を持って生まれた意味を感じたとか、やっぱり気づき始めたっていうのは、たぶん今の仲間たちと会社にしたりとか、学校の先生たちの下でそういう仕事をいただいたりする中で、多くの人に届けられているってなった時に実感します。
パイオニアになるとかは興味なかったけど。誰もやってなかっただけで。けど、自分のその生き方だからこそ、それがお仕事にさせていただいて、誰かの心に届くものを伝えられるって悦びはありますね。
DAIKI:今の人生の夢の最終目標が、ダンススタジオとか、もうバリアフリーが完璧に整っている複合型施設を作りたいと思っているんです。その理由としては、自分自身の経験として、ダンススタジオに通うにしてもエレベーターがないから通えない人や、スロープがないから行けない、駐車場がないから行けないという人をたくさん見てきたからです。
教育的にも見た時に、なんかおかしいなって思って。それが合致している全部が含まれている複合型施設を東京のど真ん中に作りたいと思っていて。それが、自分があと5年か10年でやりたいって思っていることで。それが、道徳の社会モデルになってほしいっていうか。
こういうお話が、いつか道徳の教科書を変えるようなものになったらいいなっていうのが、死ぬまでに達成したいことなんですよね。
聞き手:教育もそうだし、スポーツもそうだけど。本来は、スポーツなんていうのは人間のためにあるわけであって。人間のためにあるんだったら人間のためにルールを変えたり、道具変えたりとかして構わないわけだよね。
その人にとって、見ている人や、やっている人にとって、どっちが幸せなんだ? って聞いた時に、こっちで良いんじゃないの?っていうのが本来の教育とかスポーツのあり方だと思っているよ。
DAIKI:それは、めっちゃ思いますね。
聞き手:世の中が、DAIKIが出てきたとしても奇異な目で見るんじゃなくて。もう当たり前のように一俳優として見るみたいな世の中になるまで頑張ってください。
DAIKI:そうですね。そんな世の中になってほしいです。
DAIKIプロフィール:
- 和光大学現代人間学部身体環境共生学科(現:人間科学科)2016年卒業
- SOCIAL WORKEERZ代表
- オフィシャルサイト